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前回、銀行の返済を元金均等返済にしていると書いた。元金均等返済の22年ローンである。
お金に名目が書いてあるワケではないのだが、銀行への返済には借りたお金である元本の返済金と金利の返済金の二種類がある。違いは金利の返済金は経費として所得税の計算前に所得から引けるが、元本の返済は所得税を払った後の残ったお金で払わなくてはならない点だ。 金利は変動するものだが、ここでは一定だとしてお話しする。簡単に言うと元利均等返済は金利から先に返済していく方法、元金均等返済は金利に加えて元本も毎年返済していくと言う方法である。元利均等返済はローン期間中定額返済だが、元金均等返済では最初は返済額が多く、返済を続けていくうちに元本が減るので金利の返済が少なくなっていく。(下図参照) アパート事業が最大の収益を上げるのは原則的には新築時である。年を経るごとに設備の故障や建物の不具合など出費のリスクが増すのに、肝心の家賃は下がる傾向で進み、退去があれば古臭い部屋ではなかなか空き部屋が埋まらなくなり、フローリングやキッチンなどを大幅リフォームするとお金に羽根が生えたように出費していく。足場を組んで外壁を小奇麗に塗り替えたりするだけで100万円程度の出費になったりとも聞く。 また、建築費などの投資は事業の経費として所得から引ける。例えば事業の経費が所得より多ければ要するに赤字なので所得税はゼロとなる。しかし税務署は減価償却費と言って建築会社に支払った建築費を建物22年、設備15年で建設会社に無利息均等支払いをしていると、現実はそうでなくても勝手に計算して税金を請求してくる。まあ、異論があるワケではないのだがそれが減価償却費制度である。 分割されてるとは言ってもウン千万に対するの1/22や1/15なので毎年大きな経費が発生している。にも関わらずその経費は実際には誰にも支払っていないのでその分の所得税を払わずに手元にお金が残ると言う現象が起きるのである。そんな事にを知らずに税理士に任せっぱなしの大家さんは、減価償却が終わる16年目や23年目に突然経費が大幅に減ったため課税所得が大幅に上がり、所得税の額が急増すると言う理不尽な現実を突きつけられるのだ。 「所得があるのだから税金がかかるのは当然だ。贅沢言うな」と言う話ばかりではない。税金を払って銀行への返済をすると赤字になってしまうケースがかなりの確立で発生するのだ。それについては後で詳しく説明する。 元利均等返済だと23年間返済し続けても銀行への返済額は一年目と同じである。もし金利が上がればもちろん返済額も増える。金利は元本に対して掛けられる。元利均等返済は金利から返していくので長く返済しても元本は減っていなかったりする。つまり金利上昇で返済額が激増する危険性を長く抱える事になる。 それに比べて元金均等返済なら返済額は年々下がり、元本も確実に減っているのでもし金利が上がっても返済急増のリスクが軽減できるのだ。 ここまで書くとどう考えてもアパート経営には元金均等返済なのである。にも関わらず殆どの大家さんは元利均等返済を選択するのだ。何故なら建築会社の持ち込む企画書が全て25年以上の元利均等返済だからである。僕はテレビCMをやってるような業者にいくつもプランを出させたが、全て元利均等返済だった。そして23年目以降は所得税を払うと赤字になった。何故そんな事が起るのか、そこにこそ業者のペテン、いやトリックが潜んでいるのである。 業者の収支計算には固定資産税はあっても所得税や住民税、国民健康保険など所得に関わる税金の記載が全くない。それを営業担当者に聞くと電卓を弾いて概算してくれたりする。するとかなりの「手残り」と呼ばれる最終利益が出る。何故なのか。 ![]() 最初にも書いたが所得税の計算をする時に銀行返済の金利額を経費として引ける。上の図を見て欲しい。白い部分が所得から引ける経費になる。最初に「簡単に言うと元利均等返済はローン期間定額返済で金利から先に返済していく方法」と説明したが、元利均等返済なら最初の頃の銀行返済の多くを経費にでき、その分、税金が掛けられる所得を圧縮できるのである。 しかし、それは最初だけで返済額は一定なのに徐々に返済に占める金利部分は減っていく。つまり返済額も家賃収入も変わらないのに経費が減って数字の上で課税対象の所得が増えていくのである。 業者はそんな事を全く説明せず土地の持ち主に当初数年の収入を示して「アパートを建てるだけでこんなに儲かりますよ」「ほー、こんなにか、更地だと固定資産税も高いで造らん理由はないわ」となるのである。 地主が土地を担保に銀行から建築費を借り、それを建築会社に支払えば地主と建築会社とはサヨナラとなる。 十数年経って銀行返済の金利部分がなくなり、経費にできない灰色の元本部分ばかりになる。 減価償却も終わり、家賃が下がり管理コストが増えて赤字に泣くのは大家さんだけである。 上記の理由で返済が出来なくなった場合、大家さんは土地ごとアパートを手放して返済を続ける事になる。さもなくば銀行から担保を取り上げられて競売に掛けられ、それでも返しきれなかった借金を背負うだけである。そんな物件が辿りつくのが下のようなサイトなのである。 http://www.toushi-homes.jp/search/kind-200/area-4/ 利回りとは価格に対する年間家賃であり、10%とは単純計算で10年で投資額を取り戻せる事になる。収益を上げているのにオーナーが手放そうとしている築15年程度の物件が多い理由は恐らく上記の通りなのだ。利回りの大きさは金策に詰まったオーナーの悲鳴の大きさなのかも知れない。そんな中古物件は一戸400万円程度から買える、銀行も頭金を少し出せばその部屋を担保にお金を貸してくれたりする。それを専門にして普通のサラリーマンから大金持ちにのし上がった人もいる。 http://www.rhymes.co.jp/fujiyama/index.html TOBだのハゲタカファンドだのと大きな企業が買収を巡って大騒ぎしているが、強者による事業買収などこの業界では日常茶飯事なのだ。 僕がこの問題に気付いたのは皮肉にも最終的に建築会社に決めた株式会社トップメゾンさんが収支計算書を作ってくれず、銀行との交渉も自分でする事になったからだった。気付いた時の気分を例えると甲子園で相手バッターのスクイズを外して三塁ランナーをアウトにした時くらいホッとしたと言ったところだ。 つくづく投資は自己責任である。 ■
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by citi_bank
| 2007-04-01 18:00
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